花火の運命

花火屋さんがせっせと筒に火薬をつめ、
どんな風におくとどんな円を描くかなども考えられ
できてゆく花火の玉。


花火屋さんの愛情と技術をたっぷり詰め込まれた
花火玉は花火大会の催される地へとどんぶらこー
どんぶらこーと出荷され、大勢の観客のもとへと
今か今かと胸を高鳴らせているのである。


花火玉の大きさはそれぞれだから、
中には親子で出荷されるものや
恋人同士で出荷されるものもある。


でも彼らはその後の運命をまだ知らないのである。。。


離れ離れになるどころか、もう二度と会えないのに・・・。


花火大会当日、彼らは花火師とともに
発射台や船でスタンバイする。


花火大会は僕の知っている限り夏に行われるので
まだ日も暮れていないうちに出番の花火玉は悲劇である。


日も沈み辺りが花火モードになってくると、
彼らの喜びも一入である。


多くの花火玉が夏の夜空にきれいな火花を撒き散らしている中、
出番を待っている花火玉同士で打ち上げられた後は
どこに飲みに行く?なんて話をしているのである。
あそこの桟橋に集合な、なんて話したりなんかして。


いよいよ自分の番になる。
緊張の面持ちで着火、大観衆に見守られ空高く舞い上がった次の瞬間・・・




きれいな円を描いてその生涯を終えるのである。




はかない・・・。


飲みにもいけない。家族や恋人にももう会うことができない。


多くの人のおぉー!とかわぁ!って歓声と引き替えに
夜空の向こう側へときえてゆく。