とてつもなく強い意志

テレビを見ていたら、ある一人の医者についての
小さな特集が放映されていた。


カルロ・ウルバニというイタリア人医師で、
国境なき医師団でも活躍していたことが評価され、
WHOの関係者としてベトナムハノイにて
家族を引き連れ診断にあたっていた。



そんな彼が2003年の3月にある患者に出会ったことから
話はやや複雑になる。


香港から仕事でやってきた中国系アメリカ人であるその患者が
原因不明の病気になり、ウルバニ医師が国に戻すのを拒むも、
妻らの意思により患者は本国に移り、その7日後になくなる。


しばらくして、ウルバニ医師がその患者を診ていた病院で異変が起こる。


看護師や職員が次々と倒れ、ついにはウルバニ医師までもが倒れてしまう。


それまでの間、彼はベトナムの政府関係者にWHOと手を組んで
この新種のウイルスに対策を講じようとさかんに接触をするも
なかなか取り合ってもらえない。そうしている間にも
彼自身にも魔の手がいつ襲うかもわからない状況の中、
彼も妻も彼の身を案じる。


しかし、それでもウルバニ医師は自分は何のためにハノイにきたのか、
患者のそばにいて、そのウイルス解明に全力を注ぐべく
封鎖された病院に残り、必死に原因究明にあたった。


不幸なことに、香港の患者に出会ってから27日後、
彼はその病気によってついに帰らぬ人となった。


翌4月、WHOによってそのウイルスが発見された。


記憶に新しい、SARSである。


彼の予見がなかったら、ウルバニ医師のただならぬ意思がなかったら、
発見はもっと遅く、アウトブレイクも避けられなかったかもしれない。


自分の命をかけてまで患者のため、ウイルスの発見に文字通り
全てを奉げたことは大変に立派なことであるが、
ここまで彼を奮い立たせたものは何であろう。


家族のため、お金のためにひとはここまでできようか。


きっと彼は、もっと大きい、僕の想像することを凌駕した
次元のために、途方もなく強い信念を持って仕事をしていたのだと思う。


自分の命を顧みず、人のためにここまで本気になれた彼が
お亡くなりになってしまったことは不憫で仕方がないけど、
そのような意志を世界中のいろんなところで様々な人が
それぞれに持って仕事なり何なりに打ちこめられたら
きっと天国のウルバニ意志も微笑んでくれるだろう。